2005年 12月 29日
29 December 2005 / No New Resolutions
[原文] 2005年12月29日の公式サイトの日記。
No New Resolutions
以前Peteは難聴の為ライブでアコースティック・ギターしか持たなかった時期がありましたが、それはステージでの爆音の演奏ではなく、スタジオでのイヤフォン使用が原因だったと最近気づいたとの主張です。この頃また聴覚に異常を覚えるようになったということで、耳を休めながら音楽制作を続けているそうで、心配です。
このdiaryを元に、「Pete TownshendがiPodユーザーに警告」といった類のタイトルの記事がメディアに多数出回りました。以下はその一例です。
Headphones deafen you, Who star tells iPod fans (Times Online)
Who guitarist's deafness warning (BBC News)
ピート・タウンゼント、イヤホンの危険性を訴える (Barks)

70年代、私は自分が聴覚をひどく損なっていたことに気づいた。その数年後にThe Whoとしてツアーを行うのをやめた。ツアー中は大酒を飲んで体調管理を怠っており、余計ひどくなったのだ。聴覚障害は当時私の頭を最も悩ませていたことだ。ソロ・アーティストとしてツアーに出ないと決めた時、多くの人が私を怠け者扱いした。本の出版という、防音装置に守られた世界での仕事を始めた時、それが大きな成功を収めたのにも関わらず、多くの人が私のことを思い上がっているとみなした。私は傷ついたが、自分の過剰反応かもしれないと思い直した。

その後1989年に、もし私がステージ上で気をつけて、ギターのエフェクター類も小さなものにしていれば、ツアー中にそれ以上難聴が進むことはないということに気づいた。多くのファンは私のサウンドが昔と変わったと不平を言ったが、とても6フィートの高さに巨大なアンプを積み上げていた頃に戻ることはできなかった。

2006年に再び大規模なツアーを行うことが確定している。新曲を書いている私がこのツアーの命運を握っている。この作業には長い時間がかかっている。なぜデモをレコーディングするという簡単なことにそれほど時間がかかるのか不思議に思う人が多いかもしれない。今まではThe Whoに相応しい素材を探すのが大変だからと説明してきた。だがそれ以外の問題が起こりつつある。

私の耳は今トラブルを抱えている。

これまで私は医者や音楽ジャーナリストが私の聴覚について言ったことに耳を貸さないできた。幸運にも私の場合は普通の人とは異なる。ツアーとレコーディングを早めにやめて、症状が重くなるのを防いできた。

The Whoは音が大きいことで有名なバンドだが、私が何度も言ってきたように、ライブバンドとしては他のアーティストと同じぐらいの音量しか出していなかった。我々はPink Floydと並び、ただ効果的なPAシステムを構築してきた最初のUKバンドのひとつというだけだ。我々が高い品質を見込んで使いはじめた機器も、爆音を鳴らすために取り入れたと混同されることが多かった。ちなみに、これは決してイギリスだけで起こった現象ではない。ライブでの飛躍的なボリューム・アップはBill GrahamとGrateful Deadがサンフランシスコで始めたことだ。

だが現在、まさに今日の朝、夜中にスタジオで込み入ったデモ曲と格闘した後に目を覚まして再び思い知ったことがある。自分自身それに思い当たり、また世界中の人にそのことを気づかせなくてはならないと感じた。私を悩ませていた特殊な聴覚異常は、ステージで大音量で演奏していたからではなく、レコーディング・スタジオでイヤフォンを使っていたことが原因となっていたのだ。今も両耳でひどい耳鳴りがする。このようなことは、The Whoとして小さなクラブに出演した時を除いてライブの後に起こることはほとんどない。レコーディング・スタジオだけがもたらす害だ。

私が主張したいのは、聴覚障害を引き起こすのはライブの時の音ではないということだ。

何よりもイヤフォンが耳の機能を損なわせている。

スタジオでは不意に起こる雑音や甲高い音、接続不良などによって、一時的に高い音量レベルの音が鳴ることがよくある。イヤフォンをしてのドラムの演奏などはきっと狂気の沙汰と言えるのではないだろうか。本物よりも大音量の銃声を聞かされているようなものだ。だがそれではドラマーはどうやって他のミュージシャンの音を聞けるというのだろうか?私のソロでの音楽活動においては、ただ全体の音量を低く抑える為だけにドラマーを使わないことがよくある。また、完璧なパフォーマンスを録音する為には数時間演奏し続けることも多い。作業が進むにつれて耳の機能が落ち、もっとボリュームを上げなくてはならなくなる。もし耳を休ませずに酷使し続けると(最低36時間は耳に休息を与えなくてはならないのだが)それまで聞こえていた音を聞く能力を失ってしまう。難しい選択だ。

私は無意識に、この私自身の耳を駄目にするような音楽をせっせと書いては入念に作り上げていたのだった。長い時間をかけて、私の耳の不調は起こった。これは恐らく、活躍できる時期が短く、身体が消耗していくことを自覚しているスポーツ選手やダンサーと同じようなものだ。金や名声、賞賛、満たされたプライドと達成感など、見返りは大きい。だが音楽は死ぬまで続けていく仕事だ。耳が聞こえなくても曲は書けるが、それを自分で聞いたり演奏することはできない。

昨夜していた作業は、コンピュータを使って書いたまさしくエレクトリックなフレーズと通常のアコースティック・ピアノのオーバートーン、それぞれの音の調和の関係を自分の耳で確かめるというものだった。私の聴力は3~4kHzのあたりでひどく不確かになり、高音のハーモニクスやピアノのオーバートーンを聴きとることができなかった。(まだ人の話は普通に聞くことができる)言うまでもなく、しようとした作業は終わっていない。私は慣れ親しんだアコースティック・ギターとピアノに戻っていった。
(※"with my experimental tail between my legs"の訳し方がわかりませんでした。指すものは漠然とわかるのですが)(※難聴にも色々種類がありますが、Peteの場合は騒音に慢性的に晒されているうちに次第に進行する騒音性難聴というものと思われます。Peteも書いているように、4kHzを中心とした高音域の聴力損失が最初に現れます。日常会話音域は500Hz~2kHzなので通常の生活に支障はなく、最初は気づかない人も多いそうです)

現在(私はこの日記を12月29日に書いている)TowserTVに流れている2000年8月にIrvineで行われたThe Whoのライブ映像を見た人は、「5:15」で長いベースソロを弾こうとしているJohn Entwistleの姿を目にすると思う。なぜ彼のような流暢で表現力の豊かな、熟練したプレイヤーがドラマー(Zak Starkey)と頻繁に音がずれてしまうのか不思議に思うことだろう。それはJohnの耳がちゃんと聞こえていなかったからだ。それでもJohnの演奏は驚異的なものだが、ソロで音がぴたりと合わせられたことはめったになかった。

聴覚障害は修復不可能であるという点で恐ろしいものだ。もし君がiPodやそれに似たようなものを使っていても、もしくは君の子供が使っていたとしても、恐らく大丈夫だろう。耳にダメージを与えるのはスタジオ・イヤフォンだけだと思う。私はスタジオ絡みの長い経験しかない(ウォークマンが誕生するずっと以前から自分の楽しみの為にイヤフォンを使って音楽を聞いてはきたが)。だが私の直感ではとんでもない問題の種が待ち受けている。コンピュータは今や我々の世界の中心だ。もしダウンロードするという行為に欠点があったとしたら、それはミュージシャンが自分の音楽を盗まれるということではない。実のところ、それはタダでばらまかれようとしている。欠点というのは、コンピュータを使用する時に、プライバシーの為、家族や同僚を尊重する為、そして便宜上、音声を伴うほとんど全てのコミュニケーションにイヤフォンを使うことになるかもしれないということだ。

私はまだレコーディング・スタジオで長い時間を過ごし続けなければならい。ツアーが発表された今、耳に36時間の休息を与えるというのは腹立たしく、ストレスが溜まり、苦しい作業だが、私にはそれを行う義務がある。

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by yukie909 | 2005-12-29 16:01 | diary


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