2007年 02月 25日
25 February 2007 / Pete Townshend (who he?) – Prologue
[原文] 2007年2月25日のブログのポスト。
Pete Townshend (who he?) – Prologue  (コメント不可)
Prologue  (コメント可)
いよいよ自伝の掲載がスタートしました。まずはプロローグの部分です。


ショービジネス。それが私も最も古い記憶だ。よく耳にするようなフレーズを誰かが合図のように口笛で吹く。その合図にエコーつきで返事がくる。フレーズのリフレインがミュージシャン達の間を軽々とやり取りされる。第二次世界大戦が終わったちょうど15ヶ月後、私の父がバンドで活動していたバトリンズ・ホリデー・キャンプの近くのビーチで、私は座って友人の世話をしていた。見上げると美しい若者が2人、巨大な馬にまたがって駆けているのが目に入った。馬は海辺の空気に霧のような息を吹き込み、軽やかにダンスをして、櫛のように弧を描く波に砂を投げかけていた。私の両親が手を振り、向きを変えて、遠くへと駆け抜けていった。音楽と笑い声を残して。

後になってからの思い出。私はせっけんまみれの湯からまた頭を引きずり出されて水と共に胃液を吐き出した。誰かが私の頭を強く抑え、髪を後ろから鷲掴みにして引きちぎれんばかりに引っ張った。ヒリヒリと痛む両目をこすろうとしても、私の両手は私を苦しめている相手によって背中に回されて易々とひとまとめに握られており、再び顔が水の中に突っ込まれた。何度も何度も、息が吸えた時には必ず喘ぎながら「あんたなんか嫌いだ」「嫌いだ」と悪態をついた。しばらくすると、水栓から落ちてくる最後のせっけんの泡と共に私の抵抗は弱まっていった。私はバスタブの底に裸で横たわった。そこにいるのは母の名を呼びながらすすり泣く、哀れな6歳の少年だった。すると突然暖かいタオルにくるまれてごしごしと拭かれたので、私は再びパニックになり、自分を捕らえた相手に向かってもう一度せっけん水と胃液の混ざったものを吐き出した。そのせいで私は冷たい水の張られたバスタブに再度放り込まれた。

もっと後のこと。私はIntrepid Foxの隣にあるWardour Street地下駐車場に車を停めた。マーキー・クラブを通り過ぎてBrewer Streetへと向かい、角にある私の古いアパートにある美しい半月形の窓を見上げた。ここに来ると気分が落ち着くのは、ソーホーに以前住んでいたことがあるからだ。そしてマーキー・クラブこそThe Whoが音楽活動を始めた頃、5年前の1964年に、ようやく自分達の居場所を見出した場所だからだ。ここはソーホーではなく、私の家であり邸宅だ。それでも、Old Compton StreetからFrith Streetへと向かう角を曲がる時には私の心臓が早鐘を打ち始めた。私は「こんなことは無駄だ」とよく使われる言い回しで自分に言い聞かせた。恐れを感じるなど無意味だ。恐れるものなど何もない。私はもう大の大人だ。私を痛めつける者などもういないのだ。20分後にThe WhoはRonnie Scott's Jazz Clubで新しいロックオペラ「TOMMY」をマスコミに向けて演奏する。これが批評家達の前で行う我々の最初のライブパフォーマンスとなる。Dean Streetを横切った時、「ユダ!」と叫ぶ声が聞こえたような気がした。私はBob Dylanにでもなったつもりなのだろうか?
(※「ユダ」はBob Dylanがフォークからロックへと移行した頃に、コンサート中にフォークファンから「裏切り者」という意味で浴びせられたブーイングを指します)すると誰かが私の身内の間でのニックネーム、「トラウザー!」と叫んでいるのに気がついた。声のする方に目をやると少数の男達のグループで、集まって旅をしているマーキー時代からのThe Whoファンの一団に入っている者たちだった。一同を率いているのは仰々しい態度の音楽ジャーナリストで、私はいつも彼のことを自分の支持者だと思っていたが、すでに少し酔っているようだった。彼は私と目を合わせようとしなかった。私は自分の旅の最後の数歩、ギターを手に様々なことを探求する道に、彼等に入り込んでこないでほしかった。彼等にどんなかすかな恐れの気配すら感じてほしくなかった。その恐れは私が自分自身に感じることを許してはならないものだった。彼等のうちの1人が私に気づき、走って私に追いついた。息を切らして、酒の匂いを撒き散らしながら、彼は私に気分はどうだと訊ねた。私は大丈夫だと答えた。彼は心配するな、もし誰もが「TOMMY」は最低だと言ったとしても、そう思わない人もいる、ショービジネスの世界においてはわずかな議論では誰も傷つかない、と語った。
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by yukie909 | 2007-02-25 10:49 | Memoirs


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